研究概要 |
悪性腫瘍に罹患した小児の口腔状態を明らかにするため、定期的な口腔診査と共にCandida検査を行い、口腔病変の発症に影響する要因の検索と発症予知の可能性について検討した。 [対象と方法]新潟県立ガンセンター小児科に入院中で保護者の了解を得た小児60名(男36名、女24名、年齢:生後6か月〜15歳10か月)を対象とした。診断は急性リンパ性白血病24名、急性骨髄性白血病13名、悪性リンパ腫8名、神経芽腫5名、その他10名であった。治療は、化学療法、放射線療法などが行われ、経口的に抗真菌剤の投与を受けていた。 口腔内診査は、1か月に1〜2回病室で歯科用ミラー、探針、ペンライトを用いて行った。診査回数は29回で、1人あたり1-11回(平均5.6回)であった。Candidaの検査試料として、滅菌綿棒を用いて舌苔を採取した。採取試料を,クロモアガーカンジダ培地(関東化学)に塗沫し,37℃で48時間培養した。生育したコロニーから、Candidaを同定した。また、ニコンデジタルカメラにて口腔内写真を撮影し記録した。 [結果]口腔病変は、60名中32名(53%)に認められ、内訳(重複あり)は、歯肉発赤・腫脹13名、口内炎10名、毛舌7名、口腔カンジダ症4名、出血斑3名、びらん・潰瘍2名、移植片対宿主病2名、アフタ1名であった。Candida検出者は60名中10名(17%)で23検体であり、Candida albicansと同定された。10名中4名は口腔カンジダ症を発症していた。検出者10名中7名に未治療の齲蝕歯を認め、未治療の齲蝕歯を有する者(13名)のCandida検出率は54%で、齲蝕のない小児(47名)の6%に比し高く、齲蝕歯の存在がCandidaの発現に関与する可能性が示唆された。Candidaは同一症例で頻回に検出される傾向があり、定期的な口腔診査とCandida検査の有用性が示された。
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