全身姿勢、特に頭位が下顎位に影響を及ぼす動力として、下顎骨に付着している筋の活動に着目した.例えば、姿勢が悪く背中が丸くなると、それを補正するために頭位は前方かつ上向きになる(前方頭位)。前方頭位の者では、下顎骨が後下方位にある場合が多く、前方かつ上向きの頭位によって舌骨上筋群が引っ張られ下顎骨を後下方に動かすのではないかと考えた。 そこで、頭部を強制的に前突、後屈させた時の下顎の頭部に対する相対的な位置とその時の舌骨上筋活動を調べた。 実験システムを確立し、健康な10名の男性被験者について、頭部を強制的に前突、後屈させた時の下顎の頭部に対する相対的な位置、顎二腹筋前腹(舌骨上筋)および咬筋活動を記録し、以下の結果を得た。 1.頭部を強制的に前突、後屈させた時には、自然頭位での下顎安静位の場合に比べ、下顎位は後下方に変化した。 2.頭部を強制的に前突、後屈させた時では、自然頭位での下顎安静位の顎二腹筋前腹、咬筋活動に比べ、顎二腹筋前腹、咬筋活動は大きかった。 頭部を前突、後屈させた時には、舌骨上筋群が下顎骨を引っ張って下顎位は後下方に変化し、下顎位の変化をできるだけくい止めるために、閉口筋も活動すると考えられた。 全身姿勢、特に頭位は舌骨上筋群の活動に影響を及ぼし、下顎骨に付着している筋活動のバランスが変化して下顎位に影響を及ぼすことが示唆された.
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