今年度は以下の研究を行った。(1)唾液分泌速度を変化させて、口腔内3箇所のpHを同時にモニタリングし、唾液の影響による各部位のpHの変化を調べる。(2)唾液の流速と脱灰歯牙切片の再石灰化反応におよぼす影響について調べる。(3)プラークを沈着させた後、糖液によるpH低下後の回復の様相についてモニターする。 (1):硫酸アトロピン服用前後のpH変化を下顎前歯部舌側、上顎前歯部唇側、上顎臼歯部頬側の3箇所においてモニターした。硫酸アトロピン服用40分から60分後に、安静時唾液は各被験者とも服用前の約50%に減少することを確認した。その間のpHモニタリング結果は各部位ともpHが硫酸アトロピン服用前より低下する減少が認められた。その低下率は、下顎前歯部舌側が最も大きく、唾液分泌速度の影響を最も強く受けていることが伺われた。 (2):牛歯脱灰切片上に再石灰化溶液を異なったスピードで流し、そのときの再石灰化程度を調べ、流速が再石灰化におよぼす影響について検討を行った。その結果、流速が早いほうが再石灰化の程度がよいことが示唆された。 (3):プラークをpHセンサー上に沈着させて、糖液によるpH低下後のpHの回復を調べる実験では、プラークをセンサー上に沈着させることが難しく、実験方法の改良が必要と思われた。すなわちpHセンサーは有線であるために、プラーク熟成までの間、電線を口腔内に収納しておく必要があり、煩雑であること。また測定時、pH測定器に接続する時の電気抵抗値の変化が、測定に影響することが示唆された。そのため、次の課題として、無線によるpHの測定法について現在検討を行っている。
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