幼若永久歯の骨性癒着が歯の萌出に及ぼす影響を明らかにする目的で、幼犬10頭の上顎右側第一切歯・第二切歯(延べ20歯)を完全脱臼し、フッ化物中に20分間浸漬し、抜髄・水酸化カルシウムを根管貼薬した後再植することで、幼若な個体に実験的に骨性癒着を発症させた。 前年度は動揺度や萌出レベルにおける臨床的評価を行ったが、今年度は摘出した顎骨を樹脂包埋し、切端から根尖部付近にかけて切歯歯軸に対し垂直となるように連続して非脱灰切片を作製し、マイクロラジオグラム、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡等を用いて病理組織学的評価を行った。 その結果、再植したすべての実験歯に骨性癒着の発症を確認した。骨性癒着には歯根象牙質を吸収し急速に置換するタイプと、癒着を認めるが急速な歯根吸収を伴わないタイプの双方が確認された。実験側の唇側歯頸側付近の歯槽骨は、対照側に比べ陥凹していた。これは骨性癒着の生じた実験歯の唇舌側皮質骨の形成量が対照側に比べ少なく、癒着した歯根表面に向けて骨がより形成されるためと考えられる。この傾向は歯頸側付近でより顕著であった。骨性癒着の進行に伴い、再植歯間の槽間中隔部幅径は対照側に比べ広くなり、顎骨内の骨梁がすう粗化していた。このような骨性癒着による骨形成の変化は、正中口蓋縫合をはさみ対照側まで及ぶことはなかった。 幼若永久歯は萌出途上にあり、歯槽骨のモデリングの中で歯列・咬合を形成していく。この時期に生じる骨性癒着は歯の正常な萌出だけでなく、萌出に伴う周囲歯槽骨の正常な発育を阻害することが示唆された。 次年度は上記資料の画像解析を進めるとともに、発育途上の個体に生じた骨性癒着歯における骨形成の動態と歯根膜との関連について突進めて行く予定である。
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