幼若永久歯の骨性癒着が歯の萌出に及ぼす影響を明らかにする目的で、幼犬10頭の幼若永久歯である上顎右側第一・第二切歯(延べ20歯)を完全脱臼し、フッ化物中に20分間浸漬し、抜髄・水酸化カルシウムを根管貼薬した後再植することで、発育途上の幼若な個体に実験的に骨性癒着を発症させた。 今年度は、前年に行った動揺度ならびに萌出レベルの推移による臨床的評価と、実験歯と対照歯の歯軸に垂直に薄切した非脱灰水平断連続研磨切片から得られる病理組織学的評価を統括し、幼若永久歯に発症した骨性癒着の推移を検討した。画像解析装置を用いて顎骨摘出2週前より投与した蛍光発色剤の蛍光抽出領域ならびに相対蛍光強度を抽出し顎骨内での骨性癒着に進行状況を評価した。 再植した実験側では、健全な対照側に比べ蛍光抽出領域は広く、相対蛍光強度も高くなっていた。この変化は再植初期3週例で顕著に認められ、相対蛍光強度は歯頸側寄りで高い値を示した。対照歯周囲の歯槽窩では近心口蓋側に蛍光抽出領域が分布していた。健全な対照歯は唇側遠心方向に萌出し、この変化は第一切歯に比べ第二切歯でより活発であった。一方、実験歯周囲の歯槽窩では、歯頸部付近では主に口蓋側に、歯根中央部以降では再植歯全周にわたり広範囲に分布していた。歯頸側に認められた高い相対蛍光強度は再植12週では健全な対照側に近づく傾向が認められた。 骨性癒着が生じた場合では、顎骨内で活発に骨形成が認められるが、健全歯と比較し骨形成領域が異なり再植歯を置換する方向で臨床的評価と合わせて、唇側ならびに垂直方向への歯の萌出が抑制されていた。 以上より発育期に生じる骨性癒着は歯の萌出を抑制し、正常な歯槽骨の発育を阻害することが示唆された。
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