研究概要 |
矯正用インプラント使用患者へのインプラント設置、撤去時の侵襲は歯根や歯槽骨に与える影響が大きい。そこで歯科矯正の治療期間は確実な固定源として使用し、矯正治療後には生体内で吸収されて撤去を必要としない、歯科矯正治療専用の新しい体吸収性インプラントの開発を本研究の目的とした。加えて,臨床応用を前提として,吸収性インプラントを口腔内の予定する設置部位へ安全かつ確実に植立することが可能なスクリューインプラント植立システムを構築するため、現在臨床にて使用されているチタン製スクリューインプラントを用いながら検討を加えることも研究目的に加えた。まず、in vitroにて吸収性インプラントマテリアルに、加水分解の制限を目的として表面コーティングを行い、その物性に与える影響について検討を行い、以下の結果を得た。吸収性マテリアルであるポリ乳酸の表面硬さは、実験開始後2週から6ヵ月において、コーティングを行わなかった群に比較して、スパッタリングにてコーティングを行った群の低下率は有意に低い値を示した。また、6ヵ月時の吸収性マテリアルの比較では、コーティングを行わなかった群に比較して、スパッタリングにてコーティングを行った群の引張強さ、分子量は有意に高い値を示し、スパッタリングにより加水分解を制限することができ、強度低下の抑制が認められた。次いで、臨床応用を前提としたインプラントを応用とした矯正歯科治療方法の確立においては、外科治療用チタンプレートを応用して矯正治療を行った。その結果、臼歯部の遠心移動や圧下をともなう整直によって良好な咬合関係が獲得されただけでなく、歯周病の善も認められた。よって、スケルタルアンカレッジの応用は、固定源となる歯が欠損していたり、歯周病に罹患して、固定源として用いることが不可能な矯正歯科治療において、その確保のためにきわめて効果的であると考えられた。 これらの基礎研究、臨床研究より、矯正治療に用いる骨形成因子複合化吸収性骨膜下インプラントの開発と臨床応用の可能はきわめて有効であり、継続研究によって近い将来における臨床応用が期待できるものと考えられる.
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