研究概要 |
本年度は、非外科的歯周治療による2型糖尿病患者の炎症性メディエーターの変化について研究を行った。 [研究の目的]非外科的歯周治療後の臨床的および細菌学的な効果が2型糖尿病患者の炎症のメディエーターに及ぼす影響を調べることである。 [被験者と方法]被験者;中等度から重度に進行した歯周炎を有する2型糖尿病患者9名(女性2名、男性7名、平均57.6歳)と非糖尿病患者9名(女性5名、男性4名、平均52.0歳)を選択。炎症のメディエーター;高感度CRP、TNF-α、IL-6および4種の歯周病原性細菌に対する血清IgG抗体価を選択。歯周治療;プラークコントロール指導およびスケーリング、ルートプレーニングを行った。 [結果]2型糖尿病患者では、歯周治療前に非糖尿病患者より高い測定値を示した高感度CRPには治療後に有意な減少が見られ、IL-6にも減少する傾向が見られたが、治療前に非糖尿病患者より低い測定値を示したTNF-αには統計学的に有意な変化は見られなかった。非糖尿病患者では、3つの炎症のメディエーターの変化に統計学的に有意な変化は見られなかった。4種の歯周病原性細菌(Pg,Pi Aa,Fn)に対する血清IgG抗体価(titer(2^n))については、歯周治療前には、両方のグループの測定値間に統計学的に有意な差は見られず、PgとFnに対する血清IgG抗体価は健常値より高い傾向を示した。歯周治療後は、2型糖尿病患者ではPg、非糖尿病患者ではPiの測定値に統計学的に有意な減少が見られた。 [考察および結論]この結果から、2型糖尿病患者では非糖尿病患者に比べてCRPおよびIL-6が、より高濃度で産生されていたこと、4種の歯周病原性細菌に対する抗体産生は両方のグループで類似しており、抗体産生については同様の反応が示されたことが確認できた。以前、報告したように、非外科的な歯周治療を行い臨床的、細菌学的な効果が得られたことにより、2型糖尿病患者においても非糖尿病患者と同様に歯周組織の炎症が軽減し、肝細胞からのCRP産生を誘導すると考えられているIL-6の減少およびCRPの減少が確認されたと考えられる。
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