研究概要 |
実験的歯肉モデルを用いて歯周病関連細菌が上皮に付着した後に起こる上皮細胞および結合組織に及ぼす影響を免疫組織学的に検索するために、重層上皮細胞-線維芽細胞の三次元共培養系を確立した。歯肉線維芽細胞をタイプIコラーゲンゲル中に播種し、結合組織層に相当部分を作製した。PIPAAmをコーティングした培養ディッシュ(Rep Cell 96 Multi-well plate, CellSeed,東京)に培養した上皮細胞を32℃に温度を下げ、上皮細胞をシート状に剥離した。この上皮細胞シートをコラーゲンゲル中に培養した線維芽細胞上に重層化し、任意の上皮細胞の厚さの歯肉上皮細胞-歯肉線維芽細胞の立体共培養系を作製した。 また、フィルター上に1%アルギン酸ナトリウムを0.1M塩化カルシウムの存在下でゲル化させた上に上皮細胞を培養し、上皮細胞がコンフルエントに達した後、EDTAを加えアルギン酸ナトリウムゲルを溶解し、上皮細胞シートを作製した。次いで、Rep Cell Multi-well plateの場合と同様、コラーゲンゲル中に培養した線維芽細胞上に重層化し、歯肉上皮細胞-歯肉線維芽細胞の立体共培養系を作製した。この2つの系で作製した培養系は組織学的検索ではほとんど差はなく、内縁上皮を再現する系を作製することができた。現在この共培養系の上皮層の上に象牙質片を置くことにより、象牙質片と上皮細胞との間に接合上皮を誘導する系を作製中である。 この歯肉上皮細胞-歯肉線維芽細胞の立体共培養系を歯周病関連細菌であるPorphyromanas gingivalis381株およびEikenella corrodens 1073株のLPS等の細菌成分で刺激することにより、単層培養の上皮と同様、共培養系の上皮細胞からもInterluekin-8、MCP-1が産生されることが、免疫組織学検索から明らかになった。しかしながら、歯周組織局所では、IL-8は上皮の基底層に強く発現されるが、共培養系では、最外層の上皮細胞にIL-8の発現が強く認められた。現在この差を解明中である。
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