研究概要 |
本研究では、実験的歯肉モデルである重層上皮細胞-線維芽細胞の三次元共培養系を用いて歯周病関連細菌が上皮に付着した後に起こる上皮細胞および結合組織に及ぼす影響を免疫組織学的に検索するために、まず重層上皮細胞-線維芽細胞の三次元共培養系を確立した。温度感受性樹脂であるPIPAAmをコーティングした培養ディッシュ(Rep Cell, CellSeed,東京)に培養した歯肉上皮細胞を30℃に温度を下げることにより、上皮細胞をディッシュからシート状に剥離した。この上皮細胞シートをコラーゲンゲル中に培養した線維芽細胞上に重層化することにより、任意の上皮細胞の厚さの歯肉上皮細胞-歯肉線維芽細胞の立体共培養系を作製した。作製した培養系は組織学的検索ではtight junctionあるいはadherence junctionを構成するClaudin、Cadherin、JAM-1等の発現はヒト歯肉上皮とほぼ同一であった。このことから、歯周ポケット底部を再現する有用を作製する培養系が確立できたと思われる。また、PIPAAmのかわりにアルギン酸ナトリウムを用いて、同様の三次元培養を行った。 上記の系を用いて、上皮細胞のバリアー機能を担うと考えられているtight junctionの構成因子であるclaudinの発現をRT-PCRで検索した結果、炎症歯肉から得られたclaudinの発現パターンと三次元立体培養系でのclaudin発現パターンを比較したところほぼ同じであり、Claudin-1,4,7,12は恒常的に発現していると考えられる。正常歯肉ではClaudin-10の発現は認められなかったが、歯周炎歯肉ではClaudin-10の発現は認められる傾向があった。このことから、歯周炎の進行にclaudin-10が何らかの役割を果たしていることが明らかになった。
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