本研究では、マウスより多血小板血漿(PRP)と無血小板血漿(PPP)を精製し、両血漿に含まれる血小板数を測定し、PRPとPPPゲル化後の性状を比較検討した。また、来年度に予定されている血漿ゲルをマトリックスとした細胞移植実験を踏まえ、今回、骨芽細胞様細胞としてMC3T3-E1(subclone4)を培養し、両ゲル包埋後の細胞に与える生物学的活性を比較検討した。 まず、マウスから採取された全血は、クエン酸ナトリウム含有採血管に集められた。1100rpm、5分間遠心し2層に分離させた後、上層(血漿成分)をさらに2500rpm、5分間遠心した。その上層部を無血小板血漿(Platelet poor plasma : PPP)、下層部をPRPとした。PRPの血小板数は、PPPの24倍量を記録し、分離したPRPは、血小板の豊富な血漿であった。そこで、細胞移植のマトリックスとして利用するためにトロンピンで血小板を活性化するとともにゲル化した。両ゲルをホモジナイズ後、上清に含まれるTGF-β1をELISA法によって定量した。PRPゲルのTGF-β1濃度は、PPPゲルに比べ、有意に高い値(16倍)を示したことから、PRPゲルは骨再生に必要な成長因子を含んでいることが判明した。そこで、MC3T3-E1細胞をPRP、PPPゲルに包埋し、包埋後の細胞を光学顕微鏡下、走査型および透過型電子顕微鏡下で観察した。PRPゲルに包埋された細胞は表層で紡錘型を呈し、内部では超微細構造的にアポトーシスは観察されなかった。次にβ-glycerophosphate、ascorbic acid添加、無添加培地にて培養後に包埋培養された細胞のCbfa-1、ALPase、bone sialoprotein、osteocalcinのmRNA発現をRT-PCR法にて解析した。PRPゲル包埋された細胞はPPPゲル包埋されたものと比較してbone sialoproteinのmRNA発現の亢進を認め、β-glycerophosphate、ascorbic acid添加培地にて培養後のPRPゲル包埋された細胞は、PPPゲル包埋されたものと比較してosteocalcinのmRNA発現の増強を認めた。 今回の研究で、PRPゲルはMC3T3-E1細胞の骨芽細胞への分化を促進させまた骨形成能を上昇させる可能性が期待された。
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