研究課題
本研究は歯周組織の再生過程、骨性癒着のメカニズムの解明を目的としているが、その過程として本年度は抜歯窩にハイドロキシアパタイトを填入し、その周囲の石灰化基質の形成過程と、抜歯後歯根表面の掻爬を行い移殖した歯の歯周組織の再生過程を検討した。1.抜歯窩に填入したハイドロキシアパタイト周囲の石灰化基質形成に関する検討4週齢ウイスター系雄性ラットの上顎第一臼歯を抜去後、抜歯窩にエナメルタンパクを塗布したあるいは塗布しないハイドロキシアパタイトを填入し、歯槽骨内の変化を経時的に組織学的に検索した。その結果、抜歯窩内およびハイドロキシアパタイト周囲の骨形成、骨癒着率に差は見られなかったが、エナメルタンパクを塗布したハイドロキシアパタイト周囲では一層の石灰化基質が形成され、その基質に周囲の膠原線維が挿入している部位が観察された。エナメルタンパクが抜歯窩に残存する歯根膜細胞の一部に作用し、ハイドロキシアパタイト表面にセメント質様基質とそれに埋め込まれる歯根膜様線維の構築を促した可能性が示唆された。2.歯根表面の掻爬を行った移殖歯の歯周組織の再生過程に関する検討4週齢ウイスター系雄性ラットの上顎第一臼歯を抜去後、抜去歯の近心根の遠心面を掻爬し、エナメルタンパクを塗布し、あるいは塗布しないで背部皮下に移殖し、経時的に組織学的に検索した。その結果、エナメルタンパクを塗布しないものでは歯根表面に石灰化した基質形成が見られたり、歯根表面は疎な結合組織で覆われていたり、一部で吸収されていたものが多かった。一方エナメルタンパクを塗布した歯根の表面では掻爬を行っていない部分の歯根膜に連続した密な結合組織が形成されていた。このことはエナメルタンパクが歯の移殖の際、骨性癒着を予防する可能性を示唆すると思われる。
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