研究概要 |
1.リポ多糖(LPS)結合ペプチドの合成:ヒトラクトフェリン由来ペプチドhLf33K(GRRRR SVQWC AVSQP EATKC FQWQR NMRKV RGP),hLf33Kの29番目のアミノ酸をリシンからアルギニンへと変換したhLf33R,およびポリミキシンBのアミノ酸置換体であるSAEP-4(合成抗エンドトキシンペプチド;KFFKF FKFF)を合成し実験に供した。 2.リポ多糖に対する結合力の評価:当初の計画ではE.coli由来あるいはA.actinomycetemcomitans由来のLPSを調製して測定系を構築する予定であったが,代替となる市販のキット(Endoblock LBP ELISA test kit)が発売されたのでこれを利用した。このキットにより,LPSとLBPの結合を阻害する能力をポリミキシンBを基準として測定した。hLf,hLf33K,hLf33RおよびSAEP-4を被験試薬として使用した。6-7回測定をした結果,同じモル濃度を使用した場合はhLfが阻害能力が一番高く残りの合成ペプチドは阻害能力が低かった。 3.培養単球系細胞からの炎症性サイトカイン産生に対する影響:ヒト由来単球系細胞(THP-1)に,E.coli由来のLPSを加えて培養し,培養上清中のTNF-α量およびLDH活性を測定した。培養系にLPSと同時にhLfを添加することにより,TNF-α量およびLDH活性は減少した。また,LPSをTHP-1細胞に添加すると化学走化性が亢進した。しかし,LPSと同時にhLfを添加することにより亢進した化学走化性は抑制された。 4.培養ヒト歯肉線維芽細胞の抜去歯への結合に対する影響:抜去歯の根面上でヒト歯肉線維芽細胞を培養し,根面と線維芽細胞の結合状態を電子顕微鏡で観察する予定であった。しかし,担当する共同研究者の小鷲悠典が急逝したため結果は得られなかった。
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