研究概要 |
本研究は,歯周病原細菌に由来する糖脂質抗原を用いて歯周病の免疫療法を行なうための基礎を確立させることを目的に,糖脂質抗原の同定およびそれら糖脂質抗原を認識するT細胞集団のプロフィールを明らかにする試みである。本年度は,歯周病原細菌に由来する糖脂質粗抗原に含まれるT細胞の増殖応答を誘導する糖脂質を同定することを試みると同時に,および被験T細胞株数を増やすことを行なった。前年度,我々は,P.gingivalis, A.actinomycetemcomitans, T.denticolaの3菌種の全菌体破砕物から抽出した比較的極性の高い糖脂質を混合したものを抗原として,健常者から抗原特異性を有するT細胞株を8株樹立した。本年度,さらに2名の健常者から同糖脂質抗原を特異的に認識するT細胞株を計8株樹立することができた。これらT細胞応答性を誘導する糖脂質抗原が何であるかを特定するために,それぞれの抽出物を高速逆相液体クロマトグラフィーを用いて数種の画分に分画し,それぞれの画分が誘導するT細胞応答性を評価した。なお,HPLCは,水,アセトニトリル,ヘキサン,メタノールのそれぞれを移動相として,グラジュエントさせて,試料の溶出を行なった。その結果,T細胞株の増殖応答を誘導した画分は様々であり,一つに特定することはできないことが分かった。また,増殖が誘導されたT細胞集団は,その多くがCD4陽性ヘルパーT細胞であることが分かった。しかし,そのT細胞レセプターのレパートリーも様々であるため,単一の細胞集団ではないと考えられた。以上のことから,歯周病細菌に由来しT細胞応答を誘導する糖脂質抗原は複数存在すること,また増殖応答を示すT細胞はCD4陽性ヘルパーT細胞集団であることが示唆された。
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