短線毛欠損変異株の作製は、薬剤耐性遺伝子の挿入箇所を詳細に検討して、クローン化された遺伝子内にエリスロマイシン耐性遺伝子を挿入して不活化したエリスロマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片をsuicide vector pGP704に挿入して作製した。遺伝子不活化プラスミドを導入した大腸菌株とP.g ATCC33277株を共培養して不活化された遣伝子をP.g ATCC33277株に接合伝達させ、相同的組換えにより変異株を作製した。線毛遺伝子不活化の確認は、サザンハイブリダイゼーションによりP.g染色体DNA中に線毛遺伝子とエリスロマイシン耐性遺伝子のいずれにもハイブリダイズする断片の存在を確認した。線毛欠失株の確認は、短線毛に対する抗体を用いて短線毛蛋白質の有無をウェスタンブロッティングで確認した。また、菌体を2% uranyl acetateで染色し、表層の線毛を電子顕微鏡観察した。短線毛抗体を用いてイムノゴールド法により、短線毛の存在を検討した。線毛欠失株(変異株)と線毛保有株(親株)について血球凝集能、菌体表層の疎水性、細胞付着性を比較した結果、血球凝集活性および菌体表層の疎水性には線毛が関与しないことが明らかになり、細胞への付着性においては重要な働きをしていることが判明した。 実験動物による口腔内感染実験は、生後3週のラットを使用して、ラット口腔内への親株、線毛欠損株の感染実験を行った。本結果については、現在まだ結果が得られていないが、細胞への付着性が異なることから歯槽骨吸収に違いが出ると考えている。
|