研究概要 |
平成15年9月1日から翌年8月31日まで一年間,1週間以上持続する疼痛をもつ顎関節症新患患者を対象として,自記式質問票による調査を実施した.内容は疼痛,機能障害による日常生活での障害種類とその程度,疼痛種類と強度,頭痛の有無種類と強度,不安と抑うつの程度,神経症的傾向と外向的傾向,日常生活上の寄与因子として習慣や癖・スポーツ実施状況・職場や学校,家庭生活上の環境要因・睡眠中のブラキシズムの自覚程度・楽器や歌唱等の有無と程度,咬合違和感の有無と程度である.また米国で使用されているRDC/TMD調査票との相関を調べるために,同質問票における障害の有無,疼痛程度項目も和訳版を用いて同時に調査した.調査には550名の患者が参加し,そのうち542例(女性389名71.8%,男性153名28.2%)を解析対象とした.年齢(中央値,25および75パーセンタイル)は34(25,51)歳であった.症型別ではI型117例21.6%,II型83例15.3%,III型305例56.3%,IV型29例5.4%と分類された.現時点ではまだ予備的解析段階ではあるが,生活障害項目ならびに疼痛に関してRDC/TMD調査項目との相関係数は0.5-0.6と高かった.障害項目ではあくびのような大開口,長時間食事の困難が多く見られた.VASによる初診時疼痛強度は33(15,59)mmであり,疼痛表現では「疲れる」,「わずらわしい」が最も強く意識されていた.頭痛では緊張型頭痛が最も多く,付随する肩こりは30%以上の患者が自覚していた.不安および抑うつの存在が疑われる割合はそれぞれ39%,19%であった.生活上の要因として程度の差はあれ,80%以上の患者が睡眠不足,硬固食品嗜好,上下歯列接触癖,多忙,生活上の心配を有していた.咬合違和感の訴えは約半数の219例に見られ,VASによるその強度は44(17,75)mmであった.
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