本研究は、初期う蝕病巣の検出におけるElectrical Caries Monitor(ECM)および蛍光診断装置DIAGNOdentの有用性を検証し、非侵襲的咬合面う蝕診断システムの構築を目的とした。 34名(6-7歳)の99本の健全な第一大臼歯を対象に6ヶ月毎に萌出後最長66ヶ月間ECMによる測定を行った。萌出後60ヶ月未満の歯では、萌出期間が短いほどう蝕と同等の低い電気抵抗値を示す頻度が高く、ECMの場合、成熟途上にある小窩では低石灰化とう蝕との識別が難しいことが示唆された。 43名(6-7歳)の128本の第一大臼歯を6ヶ月毎に2.5年間DIAGNOdent測定および視診スコア(VS)による診査を行った。解析対象歯の全小窩は、観察期間中健全な状態(う窩が認められない)を維持した。DIAGNOdent測定値(DR)は、2種(KaVo社&Lussi et al.)のカットオフ値によりそれぞれのDIAGNOdentスコア(DS)に変換され、両者のDSとVSとの一致率が比較された。また、最終診査時のDSとベースライン時のDSとの関連を敏感度、特異度で評価した。 各診査毎の平均DRは「VS=0」では9.1-11.5、「VS≧2」では13.3-23.6であった。DSとVSとの一致率は、KaVo社のカットオフ値の場合が71.7-83.8%で、他方より高かった。DSにおける最終診査時とベースライン時との関連性については、カットオフ値「15」の場合、敏感度は36.3%、特異度は92.4%であった。一致率から、いくつかの小窩で偽陽性とされる可能性は否定できず、低石灰化(結晶の未成熟)との識別が本機器でも難しいことが示唆された。一方で、「DR<15」の小窩は高い確率で「健全」と判定でき、第一次スクリーニング基準としての採用が期待された。
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