閉経後エストロゲン作用の低下に伴う骨粗鬆症により急激に骨量が減少する。口腔内において歯槽骨窩に位置する歯牙にとって、歯槽骨の骨量の減少は、咬合力に対する抵抗性の低下や、歯周疾患の憎悪要因になっている可能性がある。最近、osteoprotegerin(OPG)/osteoclasogenesis inhibitory factor(OCIF)は、骨芽細胞に発現し破骨細胞分化を強力に抑制する分泌蛋白質として同定された。しかしOPGの生理的な作用や各種骨代謝異常における病態生理学的な意義についてはほとんど不明である。本研究では、エストロゲン作用の低下に伴う骨粗鬆症下の歯周組織におけるOPGの果たす役割を解明するため、ヒト歯根膜(PDL)細胞におけるOPGの発現に対するエストロゲンの効果について検討を行い以下の結果を得た。 1 エストラジオールは、PDL細胞に対してOPGの発現を用量依存性に誘導した。またその効果は、添加後12時間で最大を示した。PCR産物の塩基配列は、ヒトOPGの塩基配列と一致した。 2 PDL細胞に対するOPG発現誘導効果は、エストラジオールおよび合成エストラジオールであるエチニルエストラジオールで観察された。しかし男性ホルモンおよび卵胞ホルモンはOPG発現誘導効果を認めなかった。 3 エストラジオールで処置したPDL細胞の培養上清は、ODF添加により誘導されるRAW細胞の破骨細胞分化を部分的に抑制した。 以上の結果より、エストラジオールはPDL細胞においてエストラジオール受容体を介してOPG発現を制御していることが明らかとなった。従って、骨粗鬆症におけるエストロゲン作用の低下は、歯周組織においてもOPGの低下を誘発し、歯周疾患の憎悪要因になっている可能性が示唆された。
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