現行のう蝕評価方法は、う窩の有無のみを評価し、う蝕の面積や重症度に関して客観的な数値化がされていない。よって本研究では、う蝕の進行状況を再現性良く詳細に把握する為に、超音波の非破壊検査をベースとした新しい初期う蝕診断装置を提案し、世界的に標準となるう蝕評価の標準化を提言するものである。初年度は、超音波診断装置の試作器を制作した。この試作測定子は、直径が5mm、長さが20mmと小さく、口腔内で初期う蝕の表面性状を測定する事が可能である。また、測定子の制御回路も診療室で容易に持ち運び可能な小型のものが制作された。さらに、歯面への測定子の接触圧を調整する機構も利用可能となり、臨床的な応用に必要な機械的な用件を満たしていると考えられた。実際のう蝕歯の測定に先だって、測定の精度と再現性を確認するために、歯を固定して装置を正確に再現性良く作用させる試料固定台、その制御プログラムを制作した。この装置を用いてう蝕の各段階の歯や歯根面の歯石などの実際に臨床で診断が必要となる状況を想定し、歯面の測定を繰り返し行った所、う蝕歯の表面状態に応じた計測値を再現性良く測定できることが示された。さらに、エナメル質や象牙質、歯石などを含む歯面の状態を超音波測定器で明白に判別できる可能性も示された。この研究成果は、う蝕診断の新たなツールとなりうる可能性を示し、実際の臨床研究応用への道を開くものとなった。この装置は、う蝕の進行を詳細に評価できるので、歯の表面で行われている脱灰と再石灰化のバランスを評価する重要な測定機器となるであると考えられた。
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