研究概要 |
健康な20歳代の若年者を対象に,超音波診断装置で得られる嚥下動態と唾液分泌量との関連性を対照群データとして採得した。安静時唾液分泌量はロールワッテ法により,また,刺激時唾液分泌量はガムベースを咀嚼させて5分間の分泌量を吐唾法により測定して求めた。嚥下動態は唾液空嚥下時および3cc水分嚥下時の動態を記録した。動態の解析としては,顎下部にエコーウィンドを設定し下顎第一大臼歯近心面相当部の舌背歯の前額断画像を描出したデータを基に行った。計測項目としては,(1)嚥下指示から嚥下時舌背陥凹形成のスタートするまでの時間(嚥下誘発時間)(2)初回嚥下誘発時から2回目の嚥下誘発時までの間隔(3)舌背陥凹形成時間(4)舌背陥凹深度とした。 安静時唾液ないしは咀嚼刺激時唾液分泌量と嚥下誘発時間および嚥下時の舌動作時間などには関連性を認めなかった。すなわち,上記(1)〜(4)の計測結果は個人葦が大きいが,唾液の分泌量との,相関性は認められなかった。健康は若年者であれば,嚥下時の舌の筋力が強く,嚥下動態に予備力が大きいため,口腔の湿潤(乾燥)状態によらず安定した嚥下動態を示すものと考えられた。これに対し,高齢者および嚥下機能に障害を有する者では嚥下に予備力が少ないであろうと考えられ,唾液分泌量の影響が嚥下動態に反映されるものと思われる。そこで,高齢者群を嚥下障害のない群とある群とに分け,データ採得を開始した。今後,対照群データと比較しながら唾液分泌量と動態の関連性についての加齢の影響について検討していく予定である。
|