研究概要 |
上顎のみの装着により嚥下を補助する補綴装置として開発したSwalloaidの製作過程,使用材料,そして下顎の固定が摂食・嚥下機能改善にどのような効果があるかについて検討し,新しい知見,理論の実証が得られた. I.Swalloaid使用材料の物性に関する検討.では,シリコンラバー系のSofrelinerが最も適当であることが示された.またSwalloaidに限らず,補綴装置の修理の際に軟性材料を追加する場合,テトラハイドロフランによる接着が最も効果が高いことが示されたものの,歯科用軟性材料の接着剤の開発が急務であることが示唆された.II.嚥下時の口唇・顎運動解析方法の開発.では,3次元画像解析装置とハイスピードビデオを用いて顔面皮膚上標点の運動経路の3次元解析を行う方法を確立した.III.垂直的顎位の変化が嚥下時舌運動に及ぼす影響.については,歯科補綴処置のなされていない無歯顎状態の寝たきり高齢者において,食事姿勢を適切にし,減退した摂食・嚥下機能を援助しうる補綴処置を行う必要性が示唆された.IV.垂直的顎位の変化が捕食時および嚥下時口唇圧に及ぼす影響.では,無歯顎で下顎の固定を失うと,嚥下時により多くの口唇圧が必要とされる可能性が示唆された.また,捕食時口唇圧の減弱は食べこぼしなどの摂食・嚥下機能不全症状につながるが,補綴装置の装着はこれらの症状を改善する一助となることが示唆された.V.認知症高齢者における嚥下補助装置Swalloaidの受容過程.では,一定の評価に基づいて専門的口腔ケアが受容可能であった場合には,摂食・嚥下機能を援助するSwalloaidの歯科治療が受容できうる可能性が示唆された. 適切な歯科材料を使用して製作されたSwalloaidの臨床応用により,少しでも多くの患者の嚥下機能を援助し,摂食・嚥下障害を予防することを目的に,さらなる研究の邁進に努力する所存である.
|