近年、生活習慣と健康との関係は注目されており、それに対する様々な研究がなされている。我々は、口腔および全身の健康と末梢リンパ球中の姉妹染色分体交換(SCE)との関係について取り組んでおり、今回は生活習慣(全身の健康度および口腔の健康度)と遺伝的健康度(姉妹染色体分体交換:SCE)の関連性について調査、検証し、その結果がEBMを考慮した健康の指標として応用できるかどうかを明らかにしようとするものである。まず初年度の平成15年度では、抹消血リンパ球染色体変異の評価法(代表値)を確立することを目的に本研究を行った結果、抽出した染色体30個の平均値が口腔の健康・全身の健康について、全染色体変異の平均値もしくは最大値よりも、適切であるという結果を得た。2年目の平成16年度では、昨年と同一ボランティアを追跡調査し、生活習慣とSCEの変化について検討を行った。その結果、一部関係が認められなかった者もいたが、生活習慣の変化に伴いSCE数も変化する傾向が認められた。すなわち生活習慣が悪い場合はSCE数の増加が、生活習慣が良い場合はSCE数の減少する傾向にあった。以上より生活習慣とSCEとの間には関連性があることが示唆され、個々の結果を追跡調査し分析することで、口腔の健康度によって遺伝的な健康度に対して予測性を持たすことができる可能性があると考えられた。最終年度である平成17年度では、更に対象者を44名に増やし、口腔および全身の健康度とSCEとの関連性について調べた。その結果、SCEと口腔の健康との間に、ピアソンの相関係数はr=-0.30でやや相関があった(p<0.05)。また口腔の健康度の良いグループ(歯の健康度得点が16点以上)と口腔の健康度が良くないグループ(歯の健康度得点が15点以下)では、口腔の健康度が良いグループの方が良くないグループよりもSCEが有意に低かった(p<0.05)。しかし全身の健康とSCEに関連はみとめられなかった。
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