諸外国で頻用されている歯科保健関連QOL指標Oral Health Impact Profile (OHIP)の日本語版(OHIP-J)について、就業者の質問紙調査から得られた特性(性・年齢・職種など)、口腔の主観的健康感、義歯装着状況、および喪失歯数と併せて検討した。高年齢群、口腔の主観的健康感不良群、義歯装着者、喪失歯が多い群ほどOHIP-Jは高いスコア、つまり口腔関連QOLは不良であるという結果であった。さらに調整済みOHIP-Jスコアを用いて、外的基準を口腔の主観的健康感として同時的妥当性を、また喪失歯数として弁別的妥当性を検証したところあらかじめ立てた仮説にそった結果が得られた。しかしながら、本研究での翻訳手順は推奨されているガイドラインを厳密に遂行したわけではない。この点から、OHIP-Jを用いての多国間での研究を行うためには言語的な等価性についてさらに検討することが必要である。 OHIP-Jは49項目と質問項目が多く現場での活用が困難であるため、短縮版を作成した。20-59歳の8658名のデータを用いて行動計量学的手法(因子分析)により、青・壮年期を対象とした日本語版OHIPの短縮版(OHIP-JA18)を作成した。OHIP-JA18は18項目から構成され、4つの下位尺度(機能的な問題、痛み、不快感、困りごと&ハンディキャップ)からなる。OHIP-JA18は簡略化したLockerの口腔保健概念モデルに基づくコンセプトモデルに適合している。また、OHIP-JA18は青・壮年期に焦点をあてた歯科保健関連QOLの評価指標とされるためのパラメータ(内的整合性、底打ち効果、構成概念妥当性、反応性)を満たすことが示された。以上の結果より、作成した短縮版OHIP-JA18は日本の就業者(青・壮年期)に焦点をあてた歯科保健関連QOLの評価指標として活用可能であると考えられる。
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