研究概要 |
本研究の目的は,どのような災害看護学教育を行なえば開発途上国の看護学生の防災意織と行動変容が起こるか明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することにある。調査地は開発途上国であり,毎年自然災害による被害が多いニカラグアとして,研究対象はニカラグアの看護学生および看護職者とした。研究の1年目である平成15年度は同国内の看護学校と看護系大学の学生および看護職を対象として災害意識に関する質問紙調査を行い,学生171名,看護職30名から回答を得た。これらの対象に対して,災害看護学に関する講義を実施し,看護系大学の学生および看護職にはさらに集団災害医療訓練のためのエマルゴトレーニングシステムを用いて机上シミュレーションを行ない,その後に再度質問紙調査を実施して災害意織の変化の有無を検討した。看護学生については災害に対して何もできない,我慢しなければならない,自然の報復だ,などの受動的な回答が減少するとともに,防災教育や普及が看護師の仕事である,という災害による披害の予防を意織した回答が増加していた。これに対して,同国ではコミュニティに対して指導する立場にある看護職の防災教育や普及は看護師の仕事と考える率がシミュレーション実施後もあまり変動がなく,あるべき姿から考える学生と,自分自身が行っていないという現実から考える看護職との違いが示唆された。研究の2年目には,どのような教育によりさらに大きな変化が期待されるかを検討するため,地域での実習による意織と行動の変化について調査することを計画している。
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