研究概要 |
どのような災害看護学教育を行えば開発途上国の看護学生の防災意識と行動変容が起こるかを明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することを目的に,15年度の調査に引き続き,2年目の調査を実施した。15年度と同様に調査対象地はニカラグアとし,研究対象はニカラグアの看護系大学学生と看護師とした。災害看護に関する教育内容は,15年度の講義および机上シミュレーションという内容に加えて,コミュニティを使用しての地域実習を実施した。講義および机上シミュレーション教育の対象は看護系大学2年生と看護師とし,これらの教育の前後に1年目の調査時に使用したものと同じ内容の質問紙を用いて調査を行った。その後に看護系大学の3年生(15年度の対象)も加えて学生計56名,看護師34名を対象に地域実習を実施し,地域実習に合わせて作成した質問紙を用いて調査を行うとともに,グループワークの発表内容についても分析した。その結果,講義や机上シミュレーションによる意識の変化だけでなく,地域実習の導入により,学生および看護師に共通して地域の健康問題や防災上の問題点,地域防災における看護師の役割が具体的に提示されることがわかった。1年目(15年度)および2年目(16年度)の調査結果から,災害看護学教育として,机上シミュレーションの導入によって,災害意識について変化がみられるとともに,地域実習により具体的な行動がイメージされることが分かり,今後の行動変容の可能性が示唆された。社会基盤が脆弱な開発途上国では,災害の被害を最小限にとどめるために地域防災を志向した災害看護学教育が有効であり,今後の国際看護協力の課題となりうると考えられた。
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