研究概要 |
環境汚染菌の代表的存在である緑膿菌に関して,生態特異性としてのバイオフィルム形成と消毒薬感受性の関係について研究し,以下の結果を得た. 1.富山県内5医療施設の諸部署計29ヶ所から緑膿菌の分離を試み,ナースステーション蛇口・排水口,洗い場等21ケ所より分離した. 2.環境由来21株とヒト由来10株について,テフロンシート法によりバイオフィルム形成能を検討した結果,環境由来の1株を除きすべてに同形成能を認めた. 3.さらに,テフロンシート付着性SCと浮遊性FCに区別して,消毒剤の殺菌効果を指標にして比較したところ,環塩由来菌,ヒト由来菌のいずれにおいても,塩化ベンゼトニウムとグルコン酸クロルヘキシジンの殺菌作用に対して,FCに比べSCにより高い抵抗性があることが明らかにされた. 4.SCの消毒剤に対する高い抵抗性は,ヒト由来菌により顕著であった.このことから,ヒト由来菌を環境へ再汚染させることは極力避けるべきことものと考えられた. 次に,セラチア菌16株について,ランダムプライマーPCR(RAPD-PCR)法(プライマー3種使用),パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法とInfrequent restriction site-PCR法の3法について,感染経路追求法の感染看護分野への導入の視点から,緩株識別精度,簡便性点から比較し次の結果を得た. 1.16菌株は,RAPD-PCR(プライマー1)法,同(プライマー2)法とPFGE法,IRS-PCR法およびRAPD-PCR(プライマー3)法で,それぞれ15タイプ,13タイプ,9タイプおよび7タイプに識別できた. 2.RAPD-PCR法の識別精度は,プライマーの選定がキーポイントとであり,適切なプライマーを用いれば,PFGE法に匹敵する識別精度が得られることが明らかにされた.かつ検査に要する時間(2日対7日),手技の簡便性と経済性の点においてRAPD-PCR法は優れていた. 3.以上の結果から,感染看護分野への導入には,PFGE法よりも,むしろRAPD-PCR法が推奨されるとの結論を得た.
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