本年度は主に、日本と米国におけるアドボカシーに関する研究動向を探り、基礎的資料を得ることを目的に活動した。 その結果国内においては、看護倫理をキーワードとした看護師や学生の倫理的ジレンマを浮き彫りにした研究が年々増えているが、「アドボカシー(擁護)」に焦点をあてた研究は、ここ数年から見られ始めている現状が確認できた。また精神看護領域や障害者・高齢者・子ども・痴呆を研究対象としたものが先行しており、内容としては実態報告が主流であることも確認した。さらに本研究のテーマとしている「がん看護」おいては看護者の不安や、教育的グループ介入の検討に関するもののみ数本確認できた。現在これらの文献検討を進めている。 米国における「アドボカシー」に関する研究を遡ると、1972年のKosik SH.による"Patient advocacy or fighting the system"、1974年のAnnas GJ.による"The Patient rights advocate ; can nurses effectively fill the role?"が出発であった。近年ではMallik M.がアドボカシーの文献検討を広く行っており、「A nursing model of patient advocacy」も打ち出している。これらの文献を含め、米国におけるアドボカシー研究文献の翻訳を進めており、日本の研究と統合させた「がん看護におけるアドボカシー」に関する構成概念を検討している。並行して、がん看護に携わる看護師を対象とした「ペイシェント・アドボカシー」の実態調査に向けての質問・面接内容の検討を始めた。
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