研究課題に対する今年度の目的と計画は、主観的睡眠感不良の高齢者が、どのような生活習慣をもち、どのようなリズムのなかで生活しているのかを客観的な指標を用いて明らかにすることである。 そのため、本研究に参加を了承したH市在住の65歳以上の男女50人に主観的睡眠感尺度を用いた調査を行い、36人から回答が得られた。そのうちの主観的睡眠感が不良な10人の高齢者を対象にアクチグラフを24時間装着し、普段と変わらない生活をしてもらうことによって睡眠、生活リズムの客観的資料を得る方法で研究を行った。 その結果、対象者の平均年齢は72.1±4.9歳であり、男性20人(55.6%)、女性16人(44.4%)であった。主観的睡眠感得点(レンジ41〜79点)は平均61.2±10.5で良好な睡眠感の人々であることが示された。そのなかで不眠感を訴える人は、ほぼ毎日から1-2日/週までの頻度の人が10人(13.9%)であった。生活習慣はほとんどの人が規則的であり、主観的睡眠感の良否による有意差が認められなかった。 次に、アクチグラムとの関連からこの10人の結果をみてみると、主観的睡眠感は良好であり、規則的な日常生活を送っている人がWake Episodesとしてカウントできないほど睡眠開始時からの睡眠時間のほとんどにおいて体動が観察され、効率の悪い睡眠が認められた。一方、生活は規則的であるが、2〜3日/週の不眠感を訴える人のアクチグラムでは一日の睡眠時間のなかで1〜2回と少ないWake Episodesが観察された。 こうした睡眠の主観的評価と客観的指標とは相関しないことがしばしば報告されているが、今回の研究でも同様な結果が示されたと考える。今回、睡眠と同様に、高齢者の生活習慣・生活リズムに対する主観的・客観的指標との関連性が明確に示されなかったことから、データ収集にあたって今後、調査表、客観的指標の収集方法等の吟味を行っていく必要があると考える。
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