研究概要 |
易感染宿主である高齢者や脳血管障害者,重度心身障害児(者)を対象に,口腔に備わる局所の生体防御機能を損なわず,かつこれを賦活するような口腔ケアの方法を検討することが本研究の目的である。 本年度は,唾液分泌量を促進させる容易な看護介入法を見出すことを目的に、徒手的マッサージを行う場合の部位について、健常な女子学生13名を対象に唾液分泌量や唾液湿潤度の変化、自覚感調査,唾液中のTPとトリプシン活性について測定し検討した。 マッサージは,両側の大唾液腺部と口角より1cm横の表皮側(以下、口角部)で実施した。実施者は、第2指と第3指と第4指を揃えて円を描くようにそれぞれの部位の両側を同時に30回(30秒)軽擦した。唾液分泌量の測定はサリベット(株式会社アシスト)を用いた。サリベットの円筒スポンジを大唾液腺の開口部である舌小丘に2分間含み閉口状態後、採集容器にスポンジを入れ、遠心分離機で5000回転5分間遠心後の唾液量を測定した。唾液湿潤度の変化は唾液湿潤度検査紙(商品名:エルサリボ;ライオン歯科衛生研究所)を用いた。自覚感調査はマッサージによる感想を述べ合い、20項目を抽出し4件法で回答を求めた。測定時間はマッサージ5分前、直後、5分後、10分後、15分後、20分後であった。 唾液分泌量については、大唾液腺部のマッサージ直後で唾液分泌量の増加が認められた。口角1cm横においてはマッサージ直後に唾液分泌量が減少し、5分後に増加した。また、それぞれの部位で時間の経過による有意差はみられなかった。TPとトリプシン活性について有意差は見られなかった。口腔乾燥度別にみると、口腔乾燥群において大唾液腺部のマッサージが有効であった。口腔乾燥症患者に対する有効なマッサージ部位は大唾液腺部であることが示唆された。
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