研究概要 |
易感染宿主である高齢者や脳血管障害者,重度心身障害児(者)を対象に,口腔に備わる局所の生体防御機能を損なわず,かつこれを賦活するような口腔ケアの方法を検討することが本研究の目的である。 本年度は以下の項目について検討した。 1.採取法による唾液中の液性生体防御成分レベルへの影響 健常者での唾液採取法には,コットンロールを舌下腺部に2分間含む方法が多く用いられている。しかし,本研究の対象者には,この方法を適用することは困難であるため,吸引による方法が必要である。また,液性生体防御成分は吸着性が高く採取法による影響を受けやすい。従って,健常者を対象に,排唾法(唾液をためて吐き出す),コットンロール法,吸引法によって唾液を採取し,S-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量を測定した。排唾法と吸引法では有意差がなかったが,コットンロール法では,カリクレイン活性は有意差が見られなかったが,S-IgA,トリプシン活性,総タンパク量は他の方法の平均2分の1量であった。従って,本研究の対象者では,吸引法が適切であることが示唆された。 2.健常者における唾液中の液性生体防御成分レベルと口腔状態との関係 老人保健施設勤務者40名と看護学生39名を対象に,唾液は吸引法により1ml採取し,S-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量,human airway trypsin-like protease(HAT)を測定した。口腔状態は,WHOの基準による歯科検診を実施した。唾液分泌量は年齢と喫煙とに相関していた。歯周疾患レベルとHATレベルとも相関がみられた。分泌量の少ない者の濃度は高かった。唾液量を促進するケアの重要性が示唆された。
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