研究概要 |
易感染宿主である高齢者や脳血管障害者を対象に,口腔に備わる局所の生体防御機能を損なわず,かつこれを賦活するような口腔ケアの方法を検討することが本研究の目的である。 本年度は以下の項目について検討した。 1.健常者の年代および歯肉状態と唾液中の口腔内液性成分との関係 若年者(20歳代)45名,成年者(30〜50歳代)46名,高齢者(60,70歳代)30名を対象に,唾液は吸引法により5分間採取した。口腔状態は,WHOの基準による歯科検診を実施した。S-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量,human airway trypsin-like protease(HAT)を測定した。唾液分泌量は若年群の平均が0.87±0.05ml/分で他群より有意に多かった。成年群と高齢者群では有意差はみられなかった。口腔内液性成は,若年群と他群を比較した結果,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量は高齢者群が有意に高く,また。S-IgAは,若年群が有意に高かった。歯周疾患の有無との有意差はみられなかった。年齢の影響が示唆された。 2.高齢者の経口摂取者と経腸栄養者の唾液量および口腔内液性成分の比較 老人保健施設および療養型病床群入所者で経口摂取者49名,経腸栄養者25名を対象に液は吸引法により5分間採取した。S-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量,human airway trypsin-like protease(HAT)を測定した。唾液量は経口摂取者の平均は0.29±0.203ml/分,経腸栄養者の平均は0.327±0.184ml/分であった。両群に有意差は見られなかったが,口腔乾燥症の基準である1ml/10分以下よりは多かったが個人差が大きかった。液性成分の濃度は,すべての項目において経腸栄養者群のほうが高く約2倍の濃度であった。
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