研究概要 |
平成15年度においては,足底部に気泡と振動による刺激を加える足浴操作により副交感神経系の機能が亢進し,交感神経系の機能が低下するとともに免疫機能が亢進し,ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害活性が増加したことを確認した。本年度は,これらの効果が足底部への体性感覚刺激によるものなのか,温熱刺激が加わることによってもたらされた効果なのかを明らかにするために,足底刺激のみを行った場合と,膝下まで湯につけた場合とを比較検討した。また免疫機能に関して液性因子としてサイトカインなどに関しても検討し,足浴によるストレスの軽減等について,Th1(細胞性免疫)/Th2(液性免疫)反応バランスについて検討した。健康な女子6名(22〜27歳)を対象とし,各被験者は足底部への体性感覚刺激(振動と軽くたたく刺激)と,膝下まで温湯(42℃)につける足浴(水深約30cm)を10分間行った。自律神経系の評価は心拍変動の周波数解析を行い,免疫機能については,白血球分画,リンパ球サブセットをフローサイトメトリーにて解析し,またNK細胞の細胞障害活性を測定した。また足浴によるTh1/Th2バランスの変化について検討するため,Cytometoric Bead Array(CBA)システムを用いてTh1細胞産生サイトカイン(IL-2,IFN-γ,TNF-α),Th2細胞産生サイトカイン(IL-4,IL-6,IL-10)の測定を行った。足浴を行うことにより,心拍変動の周波数解析においては,副交感神経系を反映しているとされる高周波数成分(HFC)は徐々に増加し,足浴終了後も有意ではないが増加した状態であった。またNK細胞の細胞障害活性は,足浴直後,1時間後と時間の経過に伴い活性の上昇が認められた。これらの免疫機能の変化は副交感神経系の亢進によるものと思われた。また足底刺激を行うと刺激中HFCは有意な増加を示したが,刺激終了直後元に戻っていた。またTh1/Th2バランスを示すサイトカインについては足浴または足底刺激により,大きな変化を示すことはなく,概して低値を示していた。振動・気泡付きの足浴は自律神経機能の変化と共に免疫機能を高めたが,これらは足底部への触・圧刺激と温熱刺激の両方が存在することで効果が現れることが示唆された。
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