速乾性手指消毒剤の除菌効果と手荒れへの影響を明らかにするために、速乾性擦式手指消毒剤(ウェルパス、丸石製薬)、ゲル状速乾性擦式手指殺菌消毒剤(ゴージョー、GOJO Industries)、非薬用石鹸を使用した手指衛生を1日10回行った。 手荒れへの影響を見るために、手洗い前、1回手洗い後、3回後、10回後、翌日に角質細胞の形態的変化(形態値・重層値)、経皮水分蒸散量の変化(TEWL値)を調べた。ウエルパスでは角質細胞の形態的変化は全経過を通じて有意な低下は見られなかった。そしてTEWL値も有意な上昇は見られず手荒れは示唆されなかった。ゴージョーでは10回後に細胞形態、重層値ともに低下を示したが翌日には回復し、TEWL値の有意な上昇は認められなかった。非薬用石鹸と流水による手洗いを行った場合と比較しすると、ゴージョー10回使用後においてのみ細胞形態値が有意に低い値を示し、ゴージョーが非薬用石鹸よりも手荒れが起こりやすいと示唆された。しかし、ウェルパスと非薬用石鹸の皮膚への影響は同等であると考えられる。 除菌効果については1回手洗いによる除菌効果とその持続性、また、連続使用による除菌効果への影響について調べた。1回手洗い直後の除菌効果ではウェルパス、ゴージョーの順に除菌効果が高く手洗い前と比較して細菌数は有意に少なくなった。しかし、非薬用石鹸では、手洗い前と比較して逆に細菌数は増加した。1回手洗い30分後、1時間後では直後よりも細菌数は増加するものの、手洗い前と比較して細菌数は少なく、ウェルパス、ゴージョー、非薬用石鹸ではば同等の細菌数であった。さらに10回使用後の1時間後ではウェルパスまたはゴージョーを使用した群の細菌数が手洗い前よりも有意に少なく、特にウェルパス使用群では多くの場合で細菌が検出されず、連続使用による高い累積効果があると示唆された。非薬用石鹸では、手洗い前よりも細菌数が逆に有意な増加を示した。
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