平成15年度は、ラット下肢肉球部の正常皮膚付属器、特に汗腺支配の各種神経伝達物質含有神経線維や神経終末の分布を検討した。その結果、汗腺にはTH、VIP、CGRPおよびVAChT陽性の神経線維の分布を認めた。SPは、汗腺そのものより周辺の血管に多く分布していた。これらの線維を送る細胞体は、星状神経節および脊髄神経節に存在することがわかった。 平成16年度は、上記の結果を基に褥瘡形成部での各種神経伝達物質陽性線維の分布の変化を検討することを試みた。しかし、肉球部によりヒトに近い褥瘡を形成するための方法がうまくいかなかった。まず、バネ式クランプで数個の肉球部を足背部を含めて挟んでみた。実験開始直後には、大きな変化は見られなかったが、6時間後には挟んだ部位に浮腫が出現した。さらに、12時間後には血行障害によると思われる皮膚色の変化が挟んだ部位より末梢に見られた。浮腫出現時期の病変部をHE染色で見てみると、特に皮下組織に組織液の著名な貯留を認め、多くの炎症細胞が確認されたが、汗腺の形態は一応保たれていた。ほとんどの神経線維を染色するこが知られているPGP9.5による免疫染色を施したが陽性線維は観察できなかった。皮膚色の変化が見られる時期になると、上記の変化のほかに、脂肪組織に包まれて存在する汗腺の腺構造もその形態が、分泌腺様構造を失い、破壊されている像が見られた。神経線維も認められなかった。次に、イヤリングで一つの肉球部を足背部を含めて挟んでみたが、挟み込む力が弱くすぐに外れてしまい、病変の形成ができなかった。以上のように、今回の申請では、当初の目標を途中までしか達成することが出来なかった。 来年度以降は、新規にヒト同様全身に汗腺を有するスンクスを実験モデルとして、今回の申請で解明できなかったことを明らかにしていきたい。
|