研究課題
I.目的:看護過程の授業に模擬患者(SP)を導入し、その後の臨地実習におよぼす影響を明らかにする。II.対象:K看護大学平成16年度2年生で、本研究に同意の得られた5名。III.方法:質的帰納的研究法を用いた。授業へのSP導入と臨地実習との関係についてインタビューガイドを作成し、それに基づいて自由に語ってもらった。その語りは同意の上で録音し、逐語録を作成して意味のある内容でコード化し、さらにそれらをカテゴリー化して構造化をはかった。インタビューガイド作成から構造化の過程においては、スーパーバイズを受けながらすすめ、分析内容の信頼性、妥当性を確保するようつとめた。IV.結果・考察:学生が語った内容は、7つのカテゴリーに抽出された。それは、『SPの導入によって真に迫る臨地実習の体験をした』、『臨地実習前に知りえた情報から患者像を意識に浮かべた』、『SPの学修から患者との出会いの場面における自分の姿を想い描いた』、『SPの学修から想い描いた出会いを実践し、患者に受入れられた手ごたえを感じた』、『自分なりに患者のことを想い手さぐりでケア(援助)を実施した』、『実施、失敗、修正を繰り返しながら患者に見合ったケア(援助)を見出した』、『臨地実習をとおして真の患者像に迫った』であり、これらは時間的経過と学習内容によって構造化された。これらから、学生は初めて出会う受持ち患者と実習開始からスムースに関係を築くことができており、そこからさらに、患者の気持ちや状態にあったケアの実施、患者の本当の姿の理解へと深められていたといえる。現代の若者は、対人関係が苦手といわれているが、今回の結果より学生は実習早期から初めて出会う患者との対人関係を築けており、SP導入が効果的に影響していたと考えられる。さらに、患者との関係が築けることによってその患者の看護が深められていくものと考えられた。