本研究の目的は、初学者が安全性・安楽性を考慮した採血技術を習得するための、人工皮膚・人工血管装着モデルの開発と商品化である。 人工皮膚・人工血管装着モデルの条件としては(ア)材質は、人間の皮膚に近い感触が得られること、(イ)採血針を刺入した時の抵抗が人体に限りなく近いこと、(ウ)色は皮膚が肌色、血管が青色で人体に近いこと、(エ)装着が簡単であること、(オ)繰り返しの使用に耐えること、(カ)経済的であることの6つをあげた。 本年度は、人工皮膚及び人工血管の材料の検討を進めた。 1.人工皮膚・人工血管の注射針進入力評価試験 島津小型卓上試験機(EZ Test ISO9001)を用いて実施した。 1)市販の旧モデル人形の皮膚、市販の新モデル人形の皮膚、開発モデル(シリコン)、開発モデル(アメゴム)の注射針進入力評価試験 2)現在人体に使用されている人工血管(抹消血管バイパス用、バスクテック社製)の注射針進入力評価試験 2.採血時の刺入時圧測定 エアパック式接触圧計(エイエムアイ・テクノ社製)を用いて実施した。 まず実際の被験者(研究者同士)に採血を行い、次に市販の採血モデル人形、考案した人工皮膚装着モデル(シリコン+アメゴム)に採血のシミュレーションを行い、刺入時圧を測定し、これら3つの刺入時圧を比較した。 注射針進入力評価試験では、市販の新モデル人形の皮膚が平均0.54Nで、他の3つは、0.72〜0.75Nの範囲であった。採血時の刺入時圧測定では、実際の被験者に採血を行い、エアパック式接触圧計を用いて刺入時圧を測定した値と、人工皮膚装着モデルが近似値を示していた。市販のモデルより人体に近い値が得られたことは評価できる。 今後これをさらに進め、実験を重ね分析していきたい。 人工血管については、現在人体に使用されている人工血管を参考に、素材の検討をすすめている。
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