本研究の目的は、初学者が安全・安楽を考慮した採血技術を習得するための、人工皮膚・人工血管装着モデル(以下開発モデル)の開発である。 1.材料の検討 材料の検討を進めた結果、人工皮膚アメゴム板厚さ0.5mm、人工血管内径2.0、外径3.0mmの透明シリコンチューブを組み合わせたものが、採血針刺入圧が人体により近かった。装着素材はネオプレーンゴムが優れていた。 2.開発モデルの作成 腕に馴染むことと安全性を重視し、腕カバー型で前面を5層構造にした。1、3、4層にネオプレーンゴムを用いた。1層は厚さ3mmで、皮膚接触面に化学繊維を貼った。2層は、針衝き抜け予防のため、柔軟で軽く針衝き抜け防止に優れた真鍮金網寸60目を用いた。3層は1.5mm、4層は2mmで3個の部材に分割しその間にシリコンチューブ(血管)を挿み、5層をアメゴム板(皮膚)とした。開発モデルは厚み8mm以下となり、柔軟で装着が簡易、かつ駆血帯を用いて行えるのが特徴である。 3.採血時の刺入圧測定実験 1)対象: (1)被験者5名(男性1名、女性4名)、平均年齢50.4歳、(2)開発モデル、(3)市販腕モデル:京都科学(4)市販装着モデル:京都科学 2)実施者: 看護教員4名 3)刺入圧測定方法: 刺入圧測定は、エイエムアイ・テクノ社エアパック式接触圧計と研究者らが開発した差圧計を組み合わせて用いた。針は、テルモ社22Gの新針を使用した。刺入回数は、被験者は各1回、開発モデル・市販腕モデル・市販装着モデルは各2〜3回延32回である。 4)倫理的配慮: 被験者は研究の目的、意義を十分に理解し同意を得て実験に臨んだ。 5)結果・考察 採血時の刺入圧の平均は、人体1.86kPa(以下単位略)、開発モデル5.88、市販腕モデル7.25、市販装着モデル9.77であった。以上より研究者らの開発モデルは、市販の2種類の採血モデルより人体により近い採血教材であることが確認出来た。
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