研究概要 |
がん化学療法による味覚障害患者に対して,10%レモン炭酸水による含嗽が,味覚障害の回復を促すのか,どのような影響を与えるのか心理・生理学的側面からその影響を明らかにすることが本研究の最終目的である。 本年度の研究目的は、がん化学療法に伴う患者の味覚・唾液分泌の変化の実態を把握し、これらの関連性について明らかにすることである。対象は、CHOP療法・R-CHOP療法を受ける非ホジキンリンパ腫患者8名であり、味覚識別閾値測定・唾液分泌量測定・患者の主観に関する質問紙調査を治療前・4・8・12日目に施行し、中断した1名を除き、7名(87.5%)を分析した。 1.味覚識別閾値測定では明らかな味覚変化は認められなかったが、4日目に塩味・酸味が鈍化する傾向にあり、12日目には苦味が敏感になる傾向がみられた。しかしいずれについても治療前に比べて有意な変化ではなかった。 2.唾液分泌量は治療4日目に明らかに低下(t=2.738,p<0.05)しており、患者もそれを自覚している傾向にあった。8日目に分泌量は回復したが、口腔内の乾燥感が残る患者が多く、実際の分泌量と患者の主観との間に相違があった。 3.味覚と唾液分泌との相関では、味覚の変化を感じているときほど唾液分泌量が減少(t=-4.98,p<0.01)し、唾液分泌不全を自覚する(r=0.480,p<0.01)という関係が認められた。また、味覚識別閾値と唾液に対する主観的評価との関連においては、酸味との間のみに相関(r=0.585,p<0.01)が認められ、患者が唾液分泌不全を自覚しているときほど酸味に鈍感になるという結果だった。甘味・塩味・苦味については関連性は認められなかった。 以上の結果より、看護者はがん化学療法(CHOP療法・R-CHOP療法)では治療4日目に味覚変化・唾液分泌不全が起こるということを予測した上で、味覚と唾液分泌のアセスメント・介入を行っていく必要があることが示唆された。
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