本研究は、神経難病のスピリチュアルペインに焦点をあて、病状発現の自覚時から生活障害が重度にいたるまでの療養者の心理的プロセスの特徴を明らかにし、それに対応した緩和的ケア方法の検討を行った。神経難病療養者の診断初期の病体験、長期療養過程の病体験、難病医療相談の相談内容、在宅療養者を支援する訪問看護師を対象とした調査を実施した。 その結果、療養者が経験する苦悩は、6領域(身体症状・生活障害、療養者を取り巻く環境、役割遂行、経済面、夢、先行き)の12カテゴリが抽出され、身体症状・生活障害の領域における苦悩から他の苦悩が派生していた。これらの苦悩に対応する支えとして、12カテゴリが抽出された。長期療養者の心的状態は苦悩と支えとの間で揺れ動くシーソー関係にあることが明らかにされた。 1.早期介入が必要であるが、診断まもない時期は、療養者は「実感がわかない」「心理状態が不安定」といった状態であるため、心理状態のアセスメントを行いながら、情報提供を行う重要性が示唆された。 2.早期介入は、告知時の同席をはじめ、療養者が多関係職種によって支援されている実感と安心感がもてるような働きかけ、関係職種との信頼関係の構築、不安や疑問が累積させないためのサポートが重要である。心理状態が安定すれば、療養者自らが、以降の療養生活への対応に自主的に取り組みやすくなる。 3.スピリチュアルペインを緩和するためには、(1)身体面の苦痛や障害に対して優先的なはたらきかけを行うことが有効であること、特に、呼吸障害、嚥下障害、コミュニケーション障害は重視すべきである。(2)難病と生きる上での支えを発見・支持すること、(3)苦悩を支えに変換する関わりが重要であること、が示唆された。 今後は、発症からの時間軸を考慮したケアシステムの構築および看看連携のありかたについて検討をはかっていく予定である。
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