研究概要 |
目的:児の泣きは、育児ノイローゼや虐待を生じさせる危険性につながるものであり、このような状況を予知し、育児困難感や不安の軽減に貢献できるケアへと活用するために、児の泣きに対する母親の困難感を測定するための尺度を開発し、尺度の信頼性と妥当性を検討することである。 方法:1.育児困難感尺度の作成 2.育児困難感尺度を用いた調査の実施 3.育児困難感尺度の信頼性と妥当性の検討 結果:1.育児困難感尺度の作成:これまでに行なってきた母親に対する面接と生後1ヶ月〜1年時の縦断的調査の分析結果から、母親の育児困難な状況やそれに関連する要因などを整理し、泣きに対する育児困難感の概念枠組みを検討した。さらに育児に関連した既存の尺度についての文献検討から尺度項目を検討し、17項目とし、それぞれの項目に対し、困難に感じる程度を4段階のリッカート尺度とした。 2.育児困難感尺度を用いた調査の実施:研究に同意の得られた北陸地方の26出産施設において、1ヶ月健診受診の母親を対象とした。調査用紙は700部配布し、441名から回収(回収率63.0%)、有効回答は425名(有効回答率96.4%)であった。尺度項目を決定するために17項目の項目間相関、および尺度の各項目と全項目の合計得点の相関係数からr=0.4以下の3項目を削除した。 3.育児困難感尺度の信頼性と妥当性の検討:14項目の尺度の因子分析(主因子分析法、バリマックス回転)をした結果、因子負荷量が0.4以下の3項目を削除し、11項目で分析しなおした結果、固有値1以上の2因子が抽出された。第1因子は6項目からなり、「泣きに伴う育児負担」、第2因子は5項目からなり、「泣きの対応と育児の自信」と命名した。第1因子の寄与率は22.0%、第2因子までの累積寄与率は41.2%であった。Cronbach's α係数は、0.84であった。基準関連妥当性は、ベックの抑うつ尺度第2版との相関が、r=0.421,p<0.001と有意な正の相関を示し、自作の感情・情動尺度(α=0.86)ともr=-0.642,p<0.001と有意な負の相関を示した。 結論:今回開発の泣きに対する困難感尺度は11項目から構成され、おおむね高い信頼性と妥当性が得られた。
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