研究課題
近年高齢化が急速に加速進展していく中で、看護者は人々の生活の質(QOL)の向上に焦点をあて支援することが強く求められている。その中で精神的、社会的問題として注目されているものに「女性の尿失禁」がある。しかし最近、「尿失禁」と並んで分娩後の「便失禁」の頻度が予想以上に多いことが諸外国において報告されている。そこで今回、我が国における便失禁の実態と関連要因について明らかにすべく、自記式質問紙法に基づくアンケート調査を実施した。対象は10〜70歳の合計3356人の女性であり、2026人から回答を得た。回収率は60.4%であり、その内の有効回答数1982人を分析対象とした。調査内容は、便やガスの漏れの有無についてであり、関連要因として年齢、出産回数、BMI(体格指数)、閉経との関係に加えて、産科学的諸要因として分娩形態、分娩所要時間、児体重、器械分娩の有無、会陰切開の有無などを取り上げ、関連性を検討した。便失禁を認める者は2.9%(56人)、ガス失禁を認める者は22.3%(427人)であり、全体でみると便やガスが漏れると回答した者は23%に達していた。便およびガス失禁の発症を年代別にみると、年齢と共に若干の上昇傾向を認め、特に50歳代以上ではその発症が有意に多かった。出産回数別にみると、出産回数の増加に伴い若干の増加傾向を認め、未産婦、1回経産婦に比較して2回、3回経産婦では有意に多く発症していた。BMIおよび月経との関連性も認められた。また産科学的諸要因との関連性をみると、器械分娩、圧出分娩の経験において関連性が認められた。今後尿失禁との関連性など、更に詳細な検討を行うと共に、便・ガス失禁を有する女性のQOLについて検討を進めていく予定である。