研究目的 出産の施設化、医療化、妊娠出産時のケア提供者の変化のなかで、充分なケアが受けられていないために、親となる心構えや育児技術の未熟さを招いている現状がある。そこで本研究の目的は、健康な女性が妊娠期から出産、育児期までに助産師によるone to oneの継続的なケアを受けることによって、どのようにして自分のこととして引き受け、親となるカを育んでいるかを明らかにすることである。 研究方法 研究方法は、現象学的方法を基盤とした「関与観察」法である。観察者は妊産婦と助産師との二者間に素朴に現前することによって、おのれの身体が感じるところに素直に従い、そこで間主観的に伝わってくるものを反省的理性的態度で記述するという手法をとる。 研究結果 妊娠期の女性は妊娠女性であると同時に1個の生活主体として存在しているということであり、出産は、自分で産む行為でありつつ、夫、胎児を含めた子どもたち、実父母、助産師との合力で産まされているということでもあった。妊娠期から出産までを女性が主体として尊重されつつ、親身になって寄り添う周囲からの援助を受け入れられたという体験を通して、女性はその後に続く子育てを、親として大変な思いをしながらも、親として引き受ける力となっていた。そこには女性と子ども(含胎児)親になる夫と妻といった二者の相互主体的な関係がありそれをさらに助産師との相互主体的な関係が取り巻いていた。助産師の役割とは、親としての主体を育てることといえる。
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