研究概要 |
平成16年度の計画は,(1)食道がん術後患者が自覚している術後の日常生活上の変化の様相を明らかにする,(2)再建術式の違い(胸壁前皮下経路再建術とそれ以外の再建術)により,患者の自覚する困難体験の違いを明らかにする,(3)術後の変化に適応するために,患者はどのように工夫し対処しながら生活の再構築を図っているか,を明らかにすることであった. 食道切除術後,後縦隔経路再建術を受けた患者6名(男性6名)に対して,昨年同様,食道がんであることを告げられた時の気持ち,術後の生活上の困難さ等について11項目からなる半構成的質問紙を用いて自由回答法によるインタビューを実施した。昨年インタビューを実施した,胸壁前皮下経路再建術を受けた患者6名のデータと合わせ,内容分析の手法を用いて分析を行い,再建術式の違い(胸壁前皮下経路再建術とそれ以外の再建術)により,患者の自覚する術後の日常生活上の困難さについての違いを明らかにした. 分析の結果,食道切除術が食道がん患者の術後生活に及ぼす影響として,【予想をはるかに超えて苦痛と化した摂食行動】【生活圏の狭小化】の2つの大表題に集約された.これには,[細心の注意を払って食べる][摂取量の減少][持続する食事摂取後の下痢][逆流の苦痛感][家族からの励ましへの負担感][再建部をなでおろすことへの恐怖感]の6つの表題が含まれた.中でも[再建部をなでおろすことへの恐怖感]は,胸壁前皮下経路再建術受けた患者に特有の体験であった.また,【生活圏の狭小化】には,[大幅な体重減少に起因する体型の変化に対する差恥心][自分の病状を聞かれることに対する嫌悪感][再建部の膨隆に対する差恥心][再建部の膨隆に対するボディー・イメージの変化]が含まれた.[再建部の膨隆に対する差恥心][再建部の膨隆に対するボディー・イメージの変化]は,胸壁前皮下経路再建術を受けた患者に特有の体験であった. 【予想をはるかに超えて苦痛と化した摂食行動】【生活圏の狭小化】に対して患者は,《生きるために自分に見合った食べ方を体得する》《命と引き換えに変化を受け入れる》《時間をかけて変化に慣れる》という対処方法で術後生活の再構築を図っていた.
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