研究概要 |
平成17年度の研究目的は,食道がんのために食道切除術を受け,胸壁前皮下経路再建術を受けた患者が,術後の生活にいてどのような困難を抱え,その困難に対してどのように対処して生活しているかについて,質的,帰納的に明らかにすることである。 胸壁前皮下経路再建術を受けた食道がん術後患者で,口頭および文書にて研究参加に同意の得られた患者に,1人につき1回,プライバシーの保持できる環境で半構成面接を実施した。面接内容を逐語訳したものをデータとし,内容分析の手法を用いて分析を行った。 対象者は15名で,その内訳は男性12名,女性3名(56歳〜74歳),平均年齢は,66.8歳であった。平均面接時間は,45.5分であった。 分析の結果,胸壁前皮下経路再建術が食道がん切除術後患者にもたらす生活上の影響として,【再建部膨隆への羞恥心,食後の下痢がもたらす生活圏の狭小化】【再建部膨隆,大幅な体重減少,手術侵襲に伴う体力低下がもたらすボディー・イメージの変化】【予想をはるかに超えて苦痛と化した摂食行動】【予期せぬ症状出現時の動揺】【胃液・食物の逆流に伴う苦痛】【再発・転移の不安】【社会生活継続への心配】の7つが明らかとなった。そしてこれらの生活への影響に対して,《命と引き換えに変化を受け入れ行動する》《時間をかけて変化に慣れる》《生きるために自分流の食べ方を体得する》《情報を集める》《逆流を防ぐための方策を捜し求める》《定期的に病院を受診しながら用心して生活する》《今出来ることを行なう》の7つの対処行動をとりながら,手術後の生活への影響に対処していた。
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