研究概要 |
本研究の目的は,パーキンソン病患者の自尊感情の実態とそれに影響を与える要因を基本属性,病気の状態,社会との繋がりの視点から明らかにすることである. 研究方法は,通院中のパーキンソン病患者82名に,自尊感情(RosenbergのSelf-Esteem Scale;以下,RSEとする.)および基本属性,病気の状態,社会との繋がりに関する15項目の調査を行った.RSEの信頼性・妥当性の検討を行い,不適切な1項目を除いた9項目の因子分析は肯定と否定の2因子(累積寄与率42.9%)で,Cronbach'sα係数=0.78で信頼性・妥当性は確認された.RSEと各要因との関連性を相関関係,ノンパラメトリック検定,自尊感情に影響する要因の検討は重回帰分析を行った.統計にはSPSS12.0J,JSTATを用いた.倫理的配慮は,倫理委員会の承認を得,主治医と研究者より研究の趣旨等を対象に説明し,承諾を書面で得た. 調査の結果,対象の平均年齢は71.4±8.1歳と無職の高齢者が多く,男女比はほぼ1:1.重症度はステージI〜IIIが約8割であった.パーキンソン病患者のRSE(9項目:45満点)の総得点は,平均値31.60±7.74(9〜45点)で,これまでのパーキンソン病患者のRSE総得点よりも高い傾向にあった.自尊感情との群別比較で心の健康,他者への援助感,主観的症状コントロール感に有意な差(p<0.05)が見られた.重回帰分析の結果,自尊感情に影響する要因は職業,経済的満足度,On-Off現象,心の健康,他者への援助感,罹病期間の6要因(R=0.626,F=8.072,p=0.000)であり,得られた重回帰式は,Y=3.751×職業+1.847×経済的満足度+8.935×On-Off現象+0.167×心の健康+1.906×他者への援助感+0.157×罹病期間-0.158であった. 自尊感情を高めるためには,心の健康,他者への援助感,主観的症状コントロール感を高める援助が必要であることが明らかとなった.
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