本研究の目的は、透析療法期にある糖尿病性腎症患者の病の受け止めを明らかにし、透析看護における援助の示唆を得ることである。その方法として、血液透析を受ける糖尿病性腎症患者8名(男性6名、女性2名)に、病気の経過と血液透析導入期・現在・これから先について、血液透析の体験をとおして、どのように考え、感じているかについて、対象に自由に語ってもらった。分析の結果、患者の語る病の受け止めは、「病への取り組み:病は自分には該当しない、病は自分のしてきたことの報い」「医療者へおまかせ」「生への欲求:あるがままに受け入れ生き続ける、しかたない」「他者と比較する」「透析を受け入れるきっかけ」「自分なりのできることを見つける」「楽しみや行動が狭められる」「透析継続のつらさ」「食への欲求」等の9項目に大きく分類された。透析治療期にある糖尿病性腎症患者の援助の方向性として、1)患者が今後の自己像や生活の仕方を見出し、病へ取り組めるための援助、2)患者が自己価値を取り戻し、自己肯定できるための援助、3)身体的自己に自信がもて、自己拡張へ向ける援助、4)実践的知識の拡大への援助の必要性が示唆された。 また、2年後の糖尿病性腎症患者5名(男性4名、女性1各)に関して、糖尿病性腎症患者の療養生活における病との折り合いの付け方を概観した。 糖尿病性腎症患者の語りから、「療養生活における病との折り合いの付け方」と「それを支える信条」が聞かれた。療養生活における病との折り合いの付け方には、「体の異常や体の辛さの限界を体感し、折り合いの付け方を学ぶ」「医療者に確認しながら折り合いの按配を知っていく」「自分なりの折り合いの付け方を守る」「他者からの働きかけにより折り合いを意識する」「自分の折り合いの付け方に自信をもつ」があった。また、療養生活における病との折り合いを支える信条には、「透析をしながら生きぬくための自分なりの人生観をもつ」「他の治療や病者と比べ、透析の良さに感謝する」が認められた。
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