研究の目的は、1)日本の小児がん患者のresilience(弾力性)を米国と比較する、2)弾力性の向上法を解明する、3)平成12〜14年までの研究結果の妥当性を高めるための追加調査を行う、4)弾力性を高める支援を構築することであった。 研究方法は、前回同様、半構成化面接と自己概念・ソーシャルサポートマップの質問紙によるケーススタディー法で行い、パターン適合法で解析した。協力者は前回の11〜18歳の小児がん患者16名とその母親であった。 調査結果は次の通りであった。 1.告知された患者の弾力性の高め方は米国と類似していた。診断時の親の病気への前向きな姿勢が患児に希望を与え弾力性を高めていた。弾力性の高め方は初発の患者は退院時期に、再発者は入院の早期に、学校にもどるための勉強に取り組むなど病気の経過で相違がみられた。 2.未告知の患者は将来の目的が不明確だったが弾力性を高める可能性はみられた。 3.自己概念では中学生の患者に高得点群の母親が多く、ソーシャルサポートでは小学生に高得点群の母親が多かった。ソーシャルサポートの高得点群の患者は自己概念も高かった。 考察として、小児がん患者が前向きに病気と共存していくために、将来の希望をもてるような医療、地域、社会の積極的な関わりが必要であることが示唆された。親に対して診断時に前向きな姿勢で子どもを支援できるような勇気づけや自己概念や社会的交流を高める環境作りが大切である。小児がん患者は同年代の仲間とともに思春期を生きることで弾力性を高めていることから、この時期の発達課題を達成できるような支援が必要である。また、病気の経過に応じた個別性のある支援も必要である。今後この研究を小児がん長期生存者に継続し、小児がん患者のQOLを高める継続的な支援方略を構築したい。さらに、他の健康障害をもつ子どもや幅広い分野で支援を必要としている子どものQOLを高める支援につなげたいと思っている。
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