1.妊婦を対象に、SCI(Stress Coping Inventory)と対児感情評定尺度、J-PSEQ(Japanese Self-Evaluation Questionnaire:得点が高いほど評価が悪い)を用い、ストレス対処と母親役割獲得状況との関連について検討し、以下の結果を得た。 SCIの問題志向型・情動志向型ストラテジーの2群別J-PSEQ比較では、問題志向型は出産準備、情緒志向型は妊娠の受容が一方の群より高く、有意差を示した。また、下位尺度間での関連をみると、SCIの自己コントロール型はJ-PSEの妊娠の受容及び母親役割の同一化と正の相関、母親との関係が負の相関を示した。 2.初産婦を対象とした縦断的調査のデータを上記同様に検討し、以下の結果を得た。 (1)SCIストラテジー別J-PSEQの各項目の比較は、妊娠初期・末期とも差がみられなかった。(3)SCIストラテジー別に妊娠時期別のJ-PSEQの変化をみると、問題志向型では、妊娠の受容の値が妊娠初期より末期に低下し、分娩の準備と分娩の痛みと恐怖の値が高くなり、有意差が認められた。(4)情緒志向型では、分娩の準備の値が末期で高くなり、有意差を示した。(5)対児感情との関連は、情緒志向型ストラテジー、下位尺度の対決型、自己コントロール型、逃避型、自己肯定型が妊娠初期の回避感情と正の相関を示し、対決型が初期の接近感情と正の相関を示した。(6)J-PSEQとの関連では、自己コントロール型が初期・末期の母親との同一化と負の相関、情動志向型・逃避型が末期の児への心配と負の相関、責任受容型が末期の出産準備と正の相関、問題志向型ストラテジーが末期の母親との関係と負の相関を示した。従って、ストレスへの対処特性は、妊娠末期で明らかとなる母親役割獲得過程と関連することが示唆された。 3.妊娠後期のSCIストラテジー別に産褥早期のAMIS(Assessment of Mother-Infant Sensitivity)得点を比較したが、明らかな差が認めず、分析方法の検討が課題となった。
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