研究概要 |
吸啜運動時における顔面筋の動きと哺乳リズムを明らかにする目的で平成15年度にビデオ撮影した健常児1名,口唇顎裂児1名,口唇口蓋裂児1名の録画テープの分析を行った. 左右から撮影した録画テープの時間合わせを行い,同一画面に左右の画像が写し出せるように編集した.次にその録画テープを再生し,連続9〜11回の吸啜運動のなかで下顎を最大に下げた状態と上げた状態の画像18〜22枚をコンピュータを使って取り出した.その画像をもとに児の顔面に貼付したテープ間の長さや角度を実測し下顎運動の上下間でt検定を行った.その結果から顔面筋の動きについて,健常児とHotz床装着前の口唇顎裂児や口唇口蓋裂児との違い,Hotz床装着前後の変化,および使用乳首による顔面筋の動きの違いを比較,検討し,以下のことが明らかになった. 1.健常児に比べてHotz床装着前の口唇顎裂児は患側の動きが大きく,健側の動きは健常児と似ていた. 2.Hotz床装着後の口唇顎裂児は患側の動きが減少し,特に口輪筋の動きが減少していた. 3.Hotz床装着前の口唇口蓋裂児の患側は,健常児に比べて口輪筋の動きが活発であり,健側は口輪筋の動きは少なかった. 4.Hotz床装着後の口唇口蓋裂児は患側,健側ともに動きが減少し,健常児に比べて動きが少なかった. 5.吸啜時の顔面筋の動きは使用乳首の種類により違いがあり,普通乳首使用に比べて,口蓋裂用乳首を使用した場合はHotz床装着後,健常児よりも動きが少なかった. これらのことからビン哺乳時に使用した乳首が顔面筋の動きに影響していること,口蓋裂用乳首を使用するとHotz床装着後の顔面筋の動きが少ないことが示唆された.今後,症例数を増やしてHotz床装着後の使用乳首について検討していくことが必要である.
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