【研究目的】 地域における糖尿病患者のエンパワーメントの過程に関連する認識と行動にかかわる要因を抽出し、糖尿病のエンパワーメントを測定する尺度を開発することである。 【研究方法】 14年度の健康診査でグリコヘモグロビン値5.6以上と診断され、糖尿病予防教室の受講対象となった糖尿病患者のうち研究協力の了解が得られた者14名(うち、教室参加者8名、非参加者6名)を対象に、グラウンデッドセオリー法を用いて、半構成面接を実施した。半構成的質問では、(1)糖尿病(あるいは高血糖)といわれたときの思い、(2)糖尿病といわれる前といわれた後の生活への思い、(3)自分の糖尿病をコントロールするために思うこと等について質問し、対象者が自由に回答できる質問形式を取った。 【結果】 中核となる15の中カテゴリーと5つの大カテゴリーが抽出された。抽出された大カテゴリーは「糖尿病の怖さに対する受容」、「行動管理主体としての自己認識」、「糖尿病のコントロール行動」、「情緒的フィルター」、「糖尿病のコントロールスキル」であった。 対象者は、教室の参加・不参加にかかわらず、糖尿病の「怖さ」に対する強い認識を持っていた。また、糖尿病がコントロール可能な病気であるという、正しい知識の獲得は、糖尿病の怖さを軽減していた。 大カテゴリー「情緒的フィルター」に位置づく中カテゴリー<情緒的な体験に基づく反応>は、糖尿病の管理行動に影響を及ぼしており、中カテゴリー<情緒的体験の意識化>は、自己の糖尿病をコントロールする主体意識や主体的行動に影響していた。
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