研究目的:本研究では、糖尿病自主グループに参加するメンバーを対象にして、主体的に習慣を改善しようとする際に体験する心理的要因について明らかにしようと試みた。研究方法:対象者は、糖尿病予防教室終了後、自主活動グループとして活動しているメンバーのうち、研究協力への同意が得られた者である。データ収集は、グループインタビューとし、(1)糖尿病(あるいは高血糖)といわれたときの思い、(2)自分の糖尿病をコントロールするために思うこと、(3)自主活動グループに入って思うこと等について半構成的質問を行なった。データ分析は、質的帰納的分析を用いた。結果及び考察:糖尿病といわれた時、彼らが体験した思いは、<糖尿病がどんな病気かわからない>という中核カテゴリーとして抽出された。また、彼らの日常生活の中での習慣改善行動の特徴は、<「食べたい気持ち]と折り合いをつける>という中核カテゴリーで表された。『テレビを見ながら1袋でも食べてしまっていたけれど、1/2ぐらいになったらやめるようにした』、『冷蔵庫から出して、はっと気づいてまた引っ込める』というように、「食べたい」という欲求に伴う行動を一度起こし、その上で注意をする範囲が決められていると考えられた。また、その調整も、『今まで自分に3個、夫に1個だった鰻頭を、自分に3個とって、夫に、"もう一個上げる"といって自分の分から減らす』というように、「食べられない」という制限よりも、自分の分はもう十分で、他者に分け与えたという満足感に置き換えるという形での対処をしていた。 また、こうした行動原理は、自主活動グループのメンバーが支えとなり、<メンバーがくじけそうな気持ちを励ましてくれる>こと、<自分の鏡のようにメンバーの体験に気づき、学ぶ>ことで、日々の自分の過ごし方を省察させることになり、日常の生活改善の努力を続けていけると意識されていた。
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